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プロット分析 と リライト [シナリオ作法]

前回のプロット分析からの、つづきです。

即興でお話を作って息子に聞かせるという「おてて絵本」の時に
プロット分析が役立った……ということだったんですが
このプロット分析は何かといいますと

さまざまな物語は、プロットであらわすことができ、
それを分析することによって、物語の構成がしっかりしてくる
ということになります。

桃太郎の物語を例にしますと
momotarou.png
おじいさんとおばあさんの紹介。……セットアップ
桃を拾い、桃太郎の誕生。……カタリスト
桃太郎、鬼退治に行くと宣言。……ターニングポイント1
鬼ヶ島への道中。動物たちの質問による足止め。……バリア
きびだんごをあげることにより動物たち仲間になる。……ツイスト
鬼ヶ島に到着。……ターニングポイント2
鬼たちとの戦い。そして勝利。……ペイオフ
財宝を持って、村に帰って来る。……エンド

という感じでプロットに起こせます。

簡単に解説しますと
セットアップで、まず状況設定します。
次にカタリスト。きっかけになる事件が起きます。
ターニングポイント1で、メインの事件に立ち向かうこととなります。
次のバリアでは、目標になかなかたどり着けない葛藤が描かれ
ツイストにより、障害を回避して更に目標に向かいます。
ターニングポイント2では、最後の試練が目の前に現れ、
ペイオフで、清算されます。
エンドは物語の余韻、結末。と、なります。

この八つの要素にプロット分析できたら、次はリライトです。
普通の桃太郎のお話ではなく「おてて絵本」の桃太郎ですから
アレンジしなくては、面白くありませんし、息子も飽きちゃいます。
なので、おてて絵本をする時は
プロット分析しつつ、それぞれの要素を強化してお話しするわけです。

セットアップとカタリストは
桃太郎というお話だということを息子に知らしめるために、
オリジナルのままでいきます。
ただし、桃太郎が強い男の子に成長したことを
きちんと付け足しておきます。

次にターニングポイント1ですが
Bad News → Good Newsにすると劇的になるので
桃太郎が出かけてる間に、村が鬼たちに襲われるシーンを入れます。
聞いてる息子は、鬼たちに憤ったり、
村が大変な目にあって、一緒に悲しみます。Bad Newsですね。
そこですかさず、Good Newsとして、
桃太郎が鬼退治に行くと宣言し、立ち上がります。

一路、鬼ヶ島を目指すこととなる桃太郎ですが
行く手を阻むのは犬・猿・キジです。
RPG的には仲間を増やすためのイベントですが
プロット分析的には目的地へ向かう足を止めるわけですからバリアです。

どこに行くの?腰にぶら下げてるのは何?きびだんご?ひとつくれないかな?
これら足止め質問に普通に答えて関門を通り抜け一人で進む…、のではなく
動物たちに吉備団子をあげる代わりに、鬼退治の仲間にする
というヒネリを加えて突破するので、ツイスト、というわけです。
yoga_hineri.png
ここの繰り返しは大人にとっては、かったるかったりしますが
子供にとっては繰り返しの面白さがあるようです。
なので、動物たちをひとまとめに登場させることなく
一匹ずつ出します。ただし、それぞれ足止めする方法を変えます。
村を出るための橋の上で犬がトオセンボしてたり
浜辺の舟に乗ろうとしたら猿が出てきて邪魔したり、とかです。

桃太郎の場合はバリアとツイストが3回ありますが
バリアとツイストの長さや回数を増減することによって
物語の長さは、如何様にも変えることができます。

プロット構成としては、バリア・ブロック→ツイスト・ブロック
になるのが理想的なんですけど、
桃太郎の場合、バリア→ツイスト、が3回繰り返されるんですよね。
もちろん、それが昔話の桃太郎としてのいいところなんですけど
シナリオのリライトとしては、
動物たちが現れて足止めしてるのを
ひとつひとつのバリア→ツイストではなくて、
ひとまとめのバリア・ブロックとして処理した方がいいと思います。
lego_block.png
例えば……犬が来て質問。吉備団子をあげて仲間になる。
しかし、そこへ猿が現れ吉備団子を奪って逃げる。
追いかける桃太郎と犬だが、見失ってしまう。
そこへキジが現れ、猿を捕まえてきてくれる。
ところが、犬と猿とキジで吉備団子の取り合いで喧嘩になる。
ここまでが、目標に向かって進んでないのでバリア・ブロック。

喧嘩を仲裁する桃太郎。動物たち全員に吉備団子をあげる。
その代わりに、鬼退治の仲間になってくれと提案。
喧嘩をやめて、仲間になる動物たち。
鬼ヶ島へ向かうために浜辺へ行く桃太郎一行。
すると、漁船を壊して回る数人の鬼を発見。
桃太郎たちは力を合わせて、鬼をやっつけ
鬼ヶ島へ行く海図を鬼から手にいれる。
と、ここまでがツイスト・ブロック。

こうして上手くいってる勢いのままに
すんなり目的達成してしまうのは、ちょっと盛り上がりに欠けるかなぁ
と、思っちゃいます。
もうひと山、欲しいですよね。

なので、ターニングポイント2では
Good News → Bad news という順番の出来事を配置します。
バリアで足止め、ツイストして前進して、最終目的地が見えてきた。
そこで、もうひとひねり。というわけです。
yoga_hineri_man.png
さて、おてて絵本の桃太郎に戻りますと
息子はバトルシーンが大好きなので
ターニングポイント2は、鬼ヶ島に到着して
鬼と戦うところまで含めます。
オリジナルだとペイオフだけだったバトルですが
ここがあっさりし過ぎてるので、膨らませるわけです。

kodomonohi_yoroi_kabuto.png

無事、鬼ヶ島に到着し、鬼たちと戦い、
仲間の活躍もあり鬼たちを圧倒する桃太郎たち。これがGood News
鬼たちを退治したと思ったところ、地鳴りと共に城の奥から
巨大な鬼の大将が現れます。
鬼の大将は犬・猿・キジを蹴散らし、桃太郎をも吹っ飛ばします。
そしてとうとう桃太郎が倒れてしまう……。これが Bad News

続いて、ペイオフ:清算です。
倒れた桃太郎を励ます犬・猿・キジ。
おじいさんおばあさんからもらった吉備団子を
桃太郎に食べさせます。
(象徴的なアイテムが最後の最後でまた活かされるわけですね)
すると、見事に立ち上がり、パワーアップした桃太郎は
鬼の大将を圧倒的な力でやっつけます。

アンパンマン方式ですね。あるいはポパイ方式。
一度、倒れた主人公が復活する。
マトリックスもそうでした。
ジョゼフ・キャンベル「神話の力」でも言及されておりますね。
英雄は一度倒れてから、復活して、より強くなる。

さて、エンドです。
桃太郎は、鬼たちに今後二度と村を襲わない約束をさせ、
奪った財宝を返すということで鬼たちを赦します。
村に帰った桃太郎は、財宝を村の人たちに返して
おじいさん、おばあさんと幸せに暮らしましたとさ。

で、おしまい。
はい、もう寝る時間だよー。
と、こんな感じの桃太郎リライトを、おてて絵本として
その場その場でアレンジしながらお話ししてたわけです。
シナリオのリライト技術が子育てに役立って良かったです。

但し、最後のバトルの場面でエキサイトしてしまい
もうひとつ、ほんわかのんびりしたお話をしなくてはならないことが
多かった気がします……。

なので、息子が桃太郎の話をせがんできた時以外は、
オリジナルの「おてて絵本」話を即興で作ってました。
息子と一緒になってお話を作ったりして、楽しかった思い出です。

reading_boy.png

プロット分析の方法は人それぞれですので
上記の桃太郎の分析は間違ってる!という人もいるでしょうし
その後のリライトの方法も手ぬるい!という人もいるでしょう。
それはおのおの自分が正解だと思う方法で試してみてください。

こうしたプロット分析からのリライトの流れというのは
シナリオの完成度を高めようと思った時に、役立つかもしれません。
参考にできるところは、参考にして頂きたいと思います。

大バコ、小バコを作ってからシナリオを書く、という人でも
案外、こうしたプロット構成は考えずに書くことがあると思います。
書き上げてはみたけど、どうもしっくりこないな、という時は
自分の作品のプロット分析をしてみて、
それから各要素の強化をすると、うまくリライトできたりします。

ちなみにリライトの前段階のプロット分析の時に
どう仕分ければいいのか、わからない時があると思います。
そういう時は、要素ごとの働きが上手く機能してない可能性があります。
なので、そこを明確にすれば、より良いシナリオになることが多いです。

もちろん、シナリオの書き方なんて、ひとりひとり違っていいものです。
なので、これが正解というわけではなく
私が勉強したり経験した中で、
うまくいったことをお伝えしてるだけに過ぎません。
何かうまくいかないんだよなぁ、という人の一助になったら幸いです。

長々と講釈たれましたが、じゃあ、お前の書いたのはどれほどのもんなんだ
と思う方はTBSオンデマンド Paraviで「私は屈しない」を配信しております。
どうぞご覧になってください。

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**(ご覧になってくださった方々のおかげです。ありがとうございます)**

では、また。
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