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リライトと 本打ち [シナリオ作法]

さて、ゴールデンウィークもとっくに過ぎ、ツツジも見頃が過ぎましたね。
そろそろ紫陽花が咲き始めている感じです。
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五月中旬までは、雨が続いて寒かったり、急に日差しが強くなって夏日になったりと
気候の変化が激しい日々が続きましたが、みなさんお変わりないでしょうか。

前回はおしらせ記事でした。
「私は屈しない」配信延長が決まったお知らせが今年もできて良かったです。
これもご覧になってくださった皆さんのおかげです。ありがとうございます。
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「サイドウェイズ」のiTunes配信も、ちょうど4月期のドラマに
小日向さんや生瀬さん、京香さんがそれぞれ出演していることもあって、順調です。
4月に上映開始されたパシフィックリムの続編には菊地凛子さんも出演してますので
サイドウェイズ出演者がみんな揃って活躍してる姿を見ることができました。
とても嬉しいです。
レンタル400円はちょっとお高いかもしれませんが
きっと満足のいく作品になってるはずですので、こちらも是非どうぞ。
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お知らせはこのくらいにしてですね
その前の記事でお話ししたリライトについて、もう少し続きを。

リライトとは、書き直しのことですが、2種類あります。
ひとつめは、自発的に行うリライト。
もうひとつは、誰かに指摘された部分を直すリライト。

シナリオコンクールなどに応募する場合は
自発的に行うリライトがメインになると思います。
(シナリオスクール生は、講師の方や同期生に講評もらってから直す場合があるのかもしれませんね。その場合でも最終的には自分がOK出すので自発的リライトに分類されるかなと思います)
これは、直した方がいいと自分が思ったところを書き直していく作業ですね。
前々回お話ししたリライトも、主に自発的に行うリライトにあたります。

一方、誰かに指摘された部分を直すリライトは、
いわゆる「本打ち」を受けての書き直し。
本打ちとは、映画やドラマのプロデューサーや監督たちと
脚本に関して打ち合わせをすることを言います。
脚「本」に関しての「打ち」合わせなので「本打ち」
と言うのかな…と勝手に思ってます。知らんけど。

執筆する前に打ち合わせを重ね、それをもとに脚本を書き上げて
メールに添付してプロデューサーや監督に送信するとですね
「じゃあ、次の水曜日に本打ちします」とかなんとか連絡が来るわけです。
で、えっちらおっちら打ち合わせ場所におもむきますと
プロデューサーや監督が、ダブルクリップで留めたA4の紙の束=シナリオ第一稿を持ってて、
そこには何やら書き込みとかあるのが見えたりすることがあります。

なんの書き込みかというと
このシーンでこのキャラがどうしてこんなセリフを言ったのか、などの質問系から
このシーンが長すぎるとか短すぎるとか、こういう行動をさせた方がいいなどの提案系、
はたまた、スポンサーが嫌がるからこんなセリフ言ってもらっちゃ困る、などのNG系。
など様々です。

そんなあれやこれやのダメ出しを受け、
一週間くらいでリライトして再び送信しなきゃいけないんですが
指摘された部分だけを直せば済むわけではない場合があって、悩ましいところです。
ホントに無駄なシーンなら単純に削って終わりですが
そうでない場合も多々あるわけです。

その場合、全体が長いからってんで、あるシーンを削ったとすると
それに伴って様々な修正の必要性が出てきます。

厄介なことに、ストーリーの進行上、削っても問題なさそうなシーンであっても
実はそういう細かなシーンがキャラクターの印象を左右するようなものだったりします。
その場合、機械的にカットしてしまうと
のちのちのキャラの行動が整合性取れないものになったりします。

そうすると、削ったシーンで与えるはずだった印象や感情を
他のシーンの行動やセリフに分散させなければならないんですね。

こういうリライトが一番難しいんですが、一番自分の力になるリライトでもあります。
自分では出来がいいと思ってた脚本であればあるほど
それは有機的に絡み合い、緻密にイメージや心情を積み重ねているので
ひとつのシーンであっても、削ったり直したりすると
全体に影響を及ぼし、それをトリミングする作業も複雑になってきます。

1シーンにひとつの役割しか持たせないよりも、いくつかの役割を持たせた方が
脚本がタイトな仕上がりになるので、面倒だと思ってもトライしてみるべきです。

ちょっと気が遠くなる時がありますけど、そんなリライトをきちんと着地させると
ドヤ顔で脚本を送信できますので、踏ん張りどころではあります。

まぁ、それでも、次の本打ちで別のダメ出しされてリライトするんですけどね。
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デビュー作を書いてる時、どれだけリライトをするのか見当もつかなかった私は
リライトするごとにファイル名を「Ver.2」から「Ver.2.5」と変えていき、
そこからちょっと変わったら「Ver.2.5.5」
などとマイナーチェンジのナンバリングをしていき
そこから更に大幅変更あったら「Ver.3」…という風にしてました。
macOS方式です。
プロットの枠組みさえ変わるようなリライトは、
せいぜいVer.5くらいで済むと思ってたからです。
「Ver.8」を超える頃になると、
あぁこれは、こんな区切り方してたらキリがないと気づいて、
日付でファイル名を区別するようにしました。

何度も何度もリライトを重ね、本打ちで議論を重ね
これで完璧だ!と思うシナリオを提出しても、まだダメ出しくらう。
メンタル面でのタフさも、脚本家に必要なんだなぁ、と実感したものです。

いま思えば、デビュー作で散々リライトしたのは
監督が鍛えてくれてたんだろうなぁ、と思います。
ありがたい。

一昨年にお仕事ご一緒したので、またそろそろ一緒に仕事したいなぁと思っております。

もし、今まさに本打ちとリライトを重ね過ぎて、もういやだー、と思ってる新人の方は
本打ちに呼んでくれてるうちが華、ここが正念場と思って頑張って頂きたいです。
ダメだなこいつ、と思われたら
スーッと潮が引くようにフェイドアウトされてしまいます。
私もフェイドアウトされたことありますし
逆にフェイドアウトされた人の代わりを務めたこともあります。

そして、まだデビューをされてない方は、まずは自発的なリライトを重ねて
作品のブラッシュアップを図ることに慣れておいてください。
自分の作品に自信を持つのは大事ですが、受け止める人がいてこその作品です。
過信は禁物。常に磨きをかけることを心がけましょう。
そして、第三者の意見を聞くというのは
自分の作品をより面白くするための貴重なチャンスですので
もし友人やシナリオスクールで耳の痛い指摘をされたとしても
真摯に受け止めてリライトしてみてください。

長々と書きましたが、あくまでも私が今まで経験した中での話なので
これが正解だというつもりはありません。
これから脚本家として歩き始める、あるいは目指している人が
リライトと本打ちの嵐に面くらわないように、心構えをしてもらいたいなと
そんな気持ちで書いてみました。

次回は、本打ちについて、もう少し書いてみようと思います。
なるべく何ヶ月も空かないようにしたいです。
では、また。

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