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キャラ先とスジ先3 [シナリオ作法]

さて、前回、前々回に続き、キャラ先・スジ先について、です。

  ちなみに「キャラ先・スジ先」は
  私が勝手に言ってる用語ですので
  よそで使っても通用しませんので
  くれぐれもお気をつけください

さてさて
脚本を書くアプローチとして
キャラ先・スジ先という方法があるけれど
一長一短なのでどっちにするか迷うよねぇ……と前回お話しました。
monogatari_king_arthur_sword.png

たとえ、自分はキャラ先が得意だし好きなんだ!という人も
いやいや、スジ先が合理的だと思うし書きやすいよ!という人も
得意なことを伸ばすのはいいことですが
弱点を補うのもまた必要です。

だったら両方のイイとこ取りすればいんじゃね?

キャラクターのプロフィールや履歴書をしっかり作ってから
きっちりかっちりプロットを構築する。
――なんだ簡単じゃん!

いやいやいや。
確かに
ベテランと言われるほどに脚本を書きなれてきたなら
自然とハコ書きも頭の中で出来るようになり
キャラ先で始めても、おおよその地図を持ちつつ
迷子にならず書き進められることができるでしょう。
しかし
ついこないだコンクールに応募したのが一作目です!
という人は、そうもいかないと思います。
car_syoshinsya_mark.png

キャラクターを先に深掘りして作り込めば
あとで組み立てたプロットに収まらない動きをしちゃうし
先にプロットをしっかり練って組み立てれば
あとで配置するキャラクターをそこに押し込もうとするあまり
矛盾だらけで設定ブレブレ御都合主義キャラに……。

結局、キャラ先でアプローチしたら
最後までキャラ優先のストーリー展開となり
面白さはその時その時の運任せで不安定
スジ先でアプローチしたら
最後までキャラはストーリーに追われる存在となり
決まりきった動きとセリフしか許されないキャラは
その魅力に欠けてしまい、その結果
あらすじは面白くても、脚本としての面白さはイマイチ……
なんてことになってしまいがち。

そうこうしてるうちに
自分はキャラ先派だ、スジ先派だ、と固定化し
あまつさえ他のやり方は邪道だなんだと拒否反応を
示してしまうようになっていき、不毛な罵り合いを……
って、そんな事態は避けたいですよね。
キャラ先・スジ先は脚本を書くためのアプローチであって
どっち派が正しいのかで争うためのものではありません。

とはいえ、書いていくうちに
それぞれのデメリットにひっかかったりして
自分のやり方は間違ってるんじゃないかと
迷ったり悩んだりするもの。
特にシナリオスクールに通わず
独学でやってる人たちは悩むんじゃないでしょうか。
私自身も、独学でやってきたので
どっちがいいのか手探り状態を続けてました。
megane_sagasu_odeko_man.png

ちなみに
私が最初に脚本を書いた時は、キャラ先でした。
但し、ざっくりとしたキャラ先。
おおよその性格と背景を設定したら
あとは舞台設定の中に放り込んで
平日にあれこれ展開やシーンやセリフを練ってメモしといて
土日に脚本として書いていく、という執筆スタイルでした。
2ヶ月ほどで書き上げて初めてシナリオコンクールに応募しました。

この時は一部の審査員に熱烈支持されることとなりましたが
残念ながら大賞を受賞することはありませんでした。

でも、それを機会に声をかけてもらい
脚本の仕事を始めることになりますから
「これは大賞向きの作品じゃないんで今回やめとこうかな」
――という考えが一瞬あたまをよぎっても
全力で書いて出来映えにある程度満足してるなら
そのテイストにハマる監督やプロデューサーが読む可能性あります。
ですので、臆せず応募した方がいいと思いますよ。

声をかけられて以降、脚本作りの現場に出るわけですが
どうにもこうにもキャラ先アプローチ一本で通すのは
限界があるな、と感じました。
kabe_tachimukau.png

最初の頃は、作品のおおもとのアイデアを監督から提示され
私が、がっちりキャラ設定を作り込んだら
それをもとに監督と二人三脚、ストーリー展開を練っていく
という形で仕事をしてました。
実際、それで脚本家デビューを果たすんですが
相性のいい監督やプロデューサーばかりと仕事する訳ではありません。
作品を良くするための衝突ならいいんですが
お互いが目指す作品イメージが固まらない決められない――
どちらかが軌道修正しようとしても主導権争いのようになってしまい
結局、なにも決まらない……などの不毛な衝突をするチームの場合
このやり方は時間がかかって仕方ないですし
最悪、誰もが着地点がわからなくなり、企画自体が空中分解……
ということになってしまいます。

障害はそれだけではなく
大人の事情でプロット変更を余儀なくされることもありますし
そのセリフはちょっと……と役者さんからNGが出ることもあります。
そんな時、最初のキャラ設定とずれてしまうから直せない、とか
あるいは、最初にきっちり組み上げたプロットとずれてしまうから
そういう書き直し案には答えられません!
などと、きっぱり言えない場面が多々あります。

そんなこんなで悪戦苦闘しつつも
実戦の中で学んでいくわけですが
キャラ先・スジ先どっちもやってみて
どうにか上手くハイブリッドができないかと
試行錯誤してきました。
で、上記に書いたような失敗がありつつも
これならば、と思うような方法を見つけました。
monogatari_king_arthur-1.png

それは
(仮)システム
です。
どういうことかと言いますと
キャラ先が得意な人は、いつも通りキャラをきちんと作り込み
そのあとでプロットを組む。
しかしそれは、がっちり揺るがせのないもの、ではなく
プロット(仮)
といった感じのもの。

スジ先が得意な人は同様にプロットをしっかりと作り込み
そのあとで、キャラ設定(仮) を作って配置します。

あくまで (仮) です。
必要に応じて、柔軟に変更するので【カッコ仮】です。

完璧なアプローチを求めるあまり
どちらもガチガチに固めてしまい
結果、ぶつかりあって上手くいかないならば
そんな無理をせず
どちらかに重心を置けばいいんです。
そしてもう一方は、臨機応変に対応させる。
軸足はひとつでいいんです。
でないと、前にも進めないし、何かあった時に対処できません。
kung-fu_man.png

キャラ先アプローチする時は
描きたい人物がいる、ということですので
キャラの生き様を効果的に描くためならば
プロットの方を変えてしまっていいですし
スジ先アプローチする時は
語りたいストーリーがあるということでしょうから
物語のテーマがしっかり伝わるためなら
キャラ設定を臨機応変にあてはめていく。

キャラ先・スジ先それぞれが
お互いを効果的に引き立てるように
補完し合うわけです。
これならキャラ先でストーリー展開で迷子になることも
スジ先でキャラクターの魅力不足に困ることも
確実に少なくなります。

例えば
桃から生まれた男が村を救うために鬼と戦う話を描きたい
というスジ先アプローチの物語の場合
monogatari_momotarou_solo.png
男をサポートする仲間を(仮)設定して書き進めます。
しかし途中で、主人公の特殊な生い立ちに対して
仲間のキャラが立ってないことに気づく。
――引き立て役が地味過ぎてもつまりませんからね。
ならば、と仮設定の仲間キャラを
インパクトのあるキャラに変えてしまいます。
いっそ人間ではなく、犬・猿・キジなどの動物にしてしまおう。
そうすれば主人公グループの特殊性が浮き彫りになるので
恐ろしい鬼にも対抗できる説得力が出ますし
キャラクターたちの魅力も増してくるわけです。
monogatari_momotarou.png

もひとつ、例えば
キャラ先アプローチによって、若者の漁師で心優しいけれど
楽しいことがあると夢中になりがちな男、を作ったとします。
それをもとに、彼が亀を助けて竜宮城に行く
というプロット(仮)を組みます。
しかし、それだけでは物足りないな……と思ったら
一度組んだからといって固執せずに
プロットを少し変えればいいんです。
なんせ(仮)ですから、遠慮はいりません。
ここでは、亀から恩返しをされてめでたしめでたし、ではなく
キャラ先で作った設定を、より活かすために
竜宮城での宴が楽しすぎて夢中になり
地上では長い年月が経ってしまっていた……
というラストに変えてみます。
するとキャラに沿いつつも意外なラストとなり
不思議な後味の物語となります。
urashimatarou.png

あくまで(仮)なので、ラストすら変えたって構わないんです。
キャラ設定だって大胆に変えてもいいんです。
キャラ先・スジ先の完全ハイブリッドを目指すから
あれこれ上手くいかないわけで
この(仮)システムならば、やりやすいんじゃないでしょうか。
私の経験上、もっとも良さげな脚本執筆アプローチ
だと思ってます。

そんなやり方、言われなくても分かってるわ!
という方もいるでしょうが
キャラ先にしようかスジ先にしようか迷ったり悩んでる時は
意外と、どちらかに囚われてしまいがち。
一度、自分のやり方は、こっちがいいんだ!と思い込むと
なかなか抜け出せなかったりします。
でも、どちらか一方のアプローチよりも
両方できた方がいいですよね。
そして、どちらかをしっかりと作り上げる人は
もう一方もしっかり作り上げねば!と思いがち。
でも、両立させようと頑張り過ぎて立ち行かなくなっては本末転倒
そういった意味でも
こうして言葉にすることで意識させることは必要だったりします。
軸足はひとつだけでいいよ。
あとのひとつは(仮)でいいんだよ。
いきなり両方完璧にやらなくていいよ――と。

大事なのは、キャラクター頼み一本、プロット頼み一本という風に
どちらかひとつに頼り切ってしまうのは得策ではありません。
キャラクターがしっかり描けていて
筋立ても申し分ない――それが理想な訳です。

しかし、両立しようとすると何故か上手くいかない
という人もいます。――私もそうでした。
そういう時は、まずはこの(仮)システムを試してみてください。

もちろん
自分のやり方が確立していて
それで上手く機能している、という方は
その方法を貫いてもらえばいいと思います。

しかし、そうではない、という人もいます。
そんな壁にぶつかった時
シナリオスクールに通ってる人なら
講師の方に聞くのが一番でしょう。
しかし、独学でシナリオを書いている、という人は
そうもいきませんよね。
自分で試行錯誤するのもいいですけど
そうこうしてるうちに
どんどんデビューが遅れてしまい
同世代どんどんデビューするわ活躍するわ
焦る焦る焦る。あああああ。
sick_panic_woman.png
すでに誰かがやってみて良さげな方法があるなら
聞いてみたいぃぃ。――そんな時あります。

そんな時は
今回の記事を思い出してもらえたらな
と思って書きました。
もちろん、これが正解、というわけではありません。
このやり方を叩き台にして
自分独自の書き方を見出す一助にしてもらえればいいな。
そう思っております。
hanami_engawa_man.png

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キャラ先とスジ先 2 [シナリオ作法]

さて、前回に引き続き、キャラ先・スジ先について です。

  ちなみに「キャラ先・スジ先」は
  私が勝手に言ってる用語ですので
  よそで使っても通用しませんので、お気をつけください 。

さてさて
脚本作りで悩ましい問題として
キャラ先・スジ先 どっちにするか
という問題がある――と前回お話しました。

特に脚本を書き始めたばかりで
何本か書いてみたあとに
はて、自分はどっちが合ってるのか
はたまた、どっちのアプローチが正解か
そんな風に悩む人は多いと思います。

先にキャラクター造形をしっかりやってから
キャラの動きを追うようにストーリーを編んでいくのか
それとも
先にプロットをしっかり組んでから
それに見合ったキャラを作り出してストーリーを構築するのか

物語の元となるアイデアが浮かんだ後
それをシナリオとして組み上げようとした時に
キャラ先にするのか?スジ先にするのか?
悩ましいところですね。
どっちがいいんでしょうか……?

whiteboard_memo_man2.png
まずはそれぞれの長所短所からみてみましょう。

キャラ先の場合ですが
人物設定をしっかりがっつりするので
セリフが自然と出てきやすい、という強みがあります。
こんな場面・こんな状況の時には
このキャラはこういう言動をするはず!
と、自信を持って書き進めることができます。
もしも迷ったとしても、キャラ設定を振り返って
キャラに入り込みさえすれば
どのくらい時間がかかるか、は別として
どう動き、どう喋るか、自ずと答えが出てくるでしょう。

キャラ先を極めますとストーリー展開を考える際に
例えば「空から女の子が降ってきた」
というオープニングの とっかかりさえ思いつけば
あとは登場人物たちが動いてくれるので
それを書き留めていけばいいわけです。

そこまで極めずとも
セリフも自然と活き活きしますし
突飛な行動をさせたとしても
キャラ設定に基づいた行動ですので
監督やプロデューサーに突っ込まれた場合に
あたふたせず、堂々と説明できます。
なによりもストーリー全体を通して
キャラクターの心情の流れを把握しながら書けるので
ブツ切りの事件の羅列にならずストーリーを語れる
という利点があります。
しかも
キャラクターがしっかりしていればいるほど
自分が思いもしなかった方向にストーリーが進んだりしますので
作者自身も、書いていて楽しいアプローチだといえます。

但し
がっつりしっかりキャラ設定をしないと
執筆途中で場当たり的な設定追加をして
いろんな部分が連鎖的に破綻してしまったり
ストーリー展開に行き詰まった際に
突破する力が決定的に足りなくなってしまいます。
そうなると、最悪、キャラ変更を余儀なくされます。

逆にキャラ作りがしっかりしていたら、していたで
登場人物への思い入れが深くなりすぎてしまい
辛い状況に叩き込むことができなくなり
平穏無事で無難な展開にしかならなかったり
キャラ同士のかけあいだけで楽しく書けてしまうので
自分だけの箱庭世界でグルグルすることとなり
ストーリー自体が全然進まなくなってしまいがち。
更にはキャラを作りこみ過ぎて、それに囚われてしまって
ストーリー展開できなくなる、ということもあります。
――このキャラはこんな行動はしない!
だから、次の展開どうすればいいのかわからん!
だから、ストーリーが進まない!
という事になる場合も、あります。

人間を描く、というドラマの基本からしたら
キャラ先が王道のように思えますが
それゆえに頓挫したときには、なかなか抜け出せない
という落とし穴があったりします。
otoshiana.png

エンタメ系やミステリ系以外の
いわゆる純文学系の小説家の方々は
キャラ先の人が多いような印象があります。
昔の映画の脚本家の方々もキャラ先が多いかも。
あくまで個人の感想ですが。

さて、次に
スジ先の場合ですが
先にストーリー構成をしっかり練りあげるので
この先の展開をどうしよう……と
執筆途中でいたずらに悩まなくて済みます。
もちろん、プロット作りの過程では
たくさん悩んで、しっかり作り込まなくてはいけませんが
そこを手を抜いたり妥協したりしなければ
執筆途中で次の展開が思いつかず途方に暮れてしまい
最悪、完成をまたずに放り出す、という心配が少なくなります。

更には効果的な伏線も貼り放題です。
書きながら次の展開を考えるというキャラ先アプローチですと
このシーンは伏線あった方がいいなと思ったら
めんどくさくても、一回、前の方に戻って
伏線シーンを埋め込む作業をしなくてはいけません。
その際、埋め込む前後のシーンのテンポや
整合性も考え直さないといけないので、大変です。
スジ先ですとその手間暇を最小限に抑えられます。

それにキャラ先の場合だったら
あらかじめ思いついた伏線を張っておいても
キャラが自由に動いた結果、伏線回収ができなくなる……
なんてことも発生しますけれど
その点、スジ先ですと、その危険性も少なくなります。

なにより
面白い設定やオープニングシーンを思いついて
脚本を書き始めたはいいが
その後の展開に行き詰まり
着地点も見出せずに、未完のままになってしまう
というリスクが減ります。

map_open.png
スジ先は、地図を持って旅に出るのと一緒です。
地図上にゴールを設定したら
途中で交差点や分かれ道になっても
どっちに行けばいいかわかりますし
もし迷っても、地図を見ればいい。
歩いていてつまらない道や渋滞してる道があった場合にも
別の道を探るためには、地図があった方が効率的。
――そういうところがスジ先のメリットです。
travel_people_pamphlet.png

その一方で デメリットは
プロットに注力してしまうがゆえに
キャラが薄くなったり
ストーリーを語らせるだけのキャラになったり
と、キャラの魅力が乏しくなりがちだ、という点です。
物語の展開の面白さに頼って
キャラの掘り下げがおろそかになると
ありふれたセリフのやりとりになってしまいますし
物語全体の面白さに深みが出てきません。

それだけならまだいいんですが
ストーリーを進めていくうちにキャラクターの設定が
どんどんブレてしまう可能性も出てきます。
あるシーンではあんな言動をしていたキャラが
別のシーンではそれとは全く反対の言動をする……
なんてことが出てきてしまいます。
ストーリーの都合上でしかキャラが存在しなくなってしまうわけです。
それでは観客・視聴者も興ざめしてしまいます。

てな感じで
どちらも一長一短。

趣味として書くなら
キャラ先が向いていると私は思います。
先の展開が分からぬ物語を、登場人物と共に作っていく
という創作する楽しみが味わえますし
たとえ展開に行き詰まっても
締め切りがありませんので
思う存分、悩んで、考えて
創作する苦労、というものも堪能できます。

じゃあ、プロとして書くなら
スジ先でなくてはいけないのか
というと、それもちょっと違います。
ただ、キャラ先だけでなくスジ先でも書けないと
プロとしてやっていくのは大変かもしれません。
slump_bad_man_write.png

なぜなら、まず監督やプロデューサーに提出するのは
プロットが多いからです。
企画書として提出する場合もプロットを求められるし
プロットがちゃんとしてなければ、尺が読めません。
キャラクターが自由に動いてるうちに
2h 枠のドラマなのに160分の脚本になってしまっては、困ります。
タランティーノならそのままでも周りは納得せざるを得ないでしょうが
みんながみんなタランティーノじゃありません。

国民的なミステリ作家も
かつてはプロットライターをしていたと聞きます。
連ドラ一話分のエピソード募集コンペをする、なんて時には
提出するのはもちろんプロットですし
企画書にもプロットを添付します。
その企画書が通って、脚本を書く段階になっても
いきなり脚本を執筆するのではなく
打ち合わせを反映させたプロットを書かねばなりません。
プロットの段階でも何度も打ち合わせを重ね、OKが出たら
ようやく脚本執筆にとりかかります。
まずはプロットの段階で納得させねばならんことが多いんですね。

なので、スジ先でプロット作りができないと
たとえコンクールで受賞してデビューできても
その後で苦労する可能性があります。

だからといってスジ先が大正義だ!とはなりません。
ここが難しいところで
出来の良いプロットが作れても
いざ脚本にしてみた時に
キャラクターの掘り下げができていないと
人物の心情の流れがブツ切りで繋がらない!
イベントをこなすために人物が動いてる!
などとダメ出しを喰らうことになります。
kaisya_komaru_man.png

ということで
やっぱり、キャラ先もスジ先も、一長一短。
あちらを立てれば、こちらが立たず……
じゃあ、どうするの?!

……気づけば、また長くなってしまいました。
申し訳ありませんが、次回に続きます。
来週には更新する予定ですので、少々お待ちください。
tachiagaru_man.png

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時代と キャラ先・スジ先 [シナリオ作法]

さて、新元号「令和」になってから5ヶ月が過ぎました。
てことで、今年も残り2ヶ月あまり……あっという間ですね。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

時代の変わり目に立ち会う
時代の節目を刻む瞬間に立ち会う
という経験をするのは、そうそうありませんので
今回の改元は、貴重な体験となりました。

近頃は、それぞれの世代どころか同世代であっても
共通して語れる体験が減っている、なんて言われますけど
今回の改元は、同じ時代を生きてる全ての世代にとっての
共通体験になったんじゃないでしょうか。
そう思うと、かなり大きなイベントだったんだなぁ。
なんて思いつつも
過ぎてみたら、既にちょっと昔のことのように感じたりして
世の動きの早さに驚きます。

時代、といえば
映画やドラマにおいても
時代的な意義のある作品、というものがあって
一応それらは名作にカテゴライズされてますが
いま観てみると「ふぅん……これが名作かぁ」
くらいの感想しかないような作品があります。
時代背景や、映画史の流れがわからないと
そのスゴさがわからない、という作品です。

一方で、いくら時が経っていても
え?これ、50年前の作品?面白いんだけど?!
という作品もあります。

kandou_movie_happy.png

せっかく映画やドラマ作りに携わるのなら
何年経っても面白さが色褪せない方がいいな、と思います。

色褪せない面白さ――
それは取りも直さず、脚本の面白さであり
なんだかんだと他の要素があるにせよ
面白い脚本であることが最低条件
だと思ってます。

映画やドラマを定食メニューだとするなら
脚本は、ご飯です。
ベースです。
ベースとしてお盆に乗っかるご飯の横には
映像の魅せ方や音楽、役者さんたちの魅力などなどが
お味噌汁や主菜として乗っかり、定食を形作ってます。
観客や視聴者は、生姜焼きやミックスフライなどの
主菜をお目当てにして定食メニューを選びます。
でも、いくらミックスフライが美味しくても
主食であるご飯:白米が美味しくなかったら
定食自体が台無しですよね。

なので、白米、大事。
そして、脚本、大事。

そこで脚本家ができることは
ご飯を美味しく炊き上げること。
それと、もうひとつは
ご飯のお供として、作家の個性を白米にのっけること

白米の上にシラスのっける人もいますし
明太子のっける人もいるでしょう。
あっさりと漬物を2・3切れ添えるだけの人もいるでしょうし
凝った人は牛肉のしぐれ煮をどっさりとのせるかもしれません。
なにをのっけるのかは人それぞれ。
美味しいと思うものを信じてのっけるしかありません。

でもやっぱり肝心なのは、ご飯の味。

food_gohan.png

どれだけ美味しいご飯のお供をのっけても
そもそも白米が美味しくなくては台無しです。
逆に言えば
美味しく炊ければ
ご飯のお供は、なくてもいいくらいです。
そして、ご飯は炊く方法がある程度決まってます。
やり方を習うことで炊けるようになる。
――上手、下手の差はあれど、です。

脚本作りもまた然り。

基本的な脚本作りがしっかりされた上に
作家独自の個性がトッピングされることで
面白い作品、良質の作品となる可能性が高くなる。
そう思ってます。
間違っても、トッピングだけで勝負してはいけません。
ベースである白米をきちんと炊かねばならないのです。

では、ごはんを炊く方法なんですが
その前、まず決めなきゃいけないことがあります。
お米の銘柄を何にするかと
炊く道具を何にするか。

コシヒカリにするのか、ひとめぼれにするのか
炊飯器で炊くのか土鍋で炊くのか、はたまた飯盒か

food_donabe_gohan.png
cooking_suihanki.png

これを脚本で言いますと
キャラ先か、スジ先か
ということになります。

ミュージシャンの楽曲作りにおいては
歌詞を先に作る「詞先」と
メロディーを先に作る「曲先」があるといいます。
それになぞらえて
キャラクターを先に考えることを「キャラ先」
筋立てを先に考えることを「スジ先」
と、私は呼んでます。

お米はキャラクターで
炊き方は筋立て、としますと

「コシヒカリ」というキャラクターを決めてから
そのキャラを活かすために「土鍋で炊く」という筋立てを選択するのか
それとも
「炊飯器で簡単便利に炊く」という筋立てを先に決めてから
そのプロットに合った「 ひとめぼれ 」というキャラを選ぶのか
どちらにするか、決めなくてはいけません。

あるアイデアを元に脚本を書こうと思った時
キャラ先にするのか
スジ先にするのか
このふた通りのアプローチがあります。

アイデアに合ったキャラを先に作り上げて
縦横に動いてもらうことでストーリーを膨らませるのか
それとも
アイデアに合ったプロットを先に作り上げて
テーマを明確に伝えられるストーリーを構築するのか

そのどちらにも良いところと悪いところがあり
脚本を書き始めたばかりの人にとっては
悩ましい問題だと思います。

正解というのはなくて
自分で書いてみて面白くなる方が一番いい

……とは思いますが
それじゃあ、優等生的過ぎるかな
……とも思います。
ならば、せっかくの機会ですので
私の持論を展開させて頂こうと思い
……ましたが
ここからキャラ先スジ先について語りますと
かなり長くなってしまいます。
ですので
キャラ先、スジ先の詳細については
また次回、お話いたします。
来週には、更新する予定でおりますので
少々お待ちください。

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正義 と お知らせ [シナリオ作法]

前回、脚本作りにおいては
自分が面白いと思うものを貫くだけが正義ではなく
観客・視聴者がみて面白くなることが正義だと書きました。
そのためにはまず
目の前にいる人たち:本打ちに参加してるプロデューサーや監督たちを
納得させる面白さにしなければならない、と。

ただし、中には自分を貫いた方が正解なケースもあるとも書きました。

nigaoe_augustus.png

通常であれば、意見交換や議論を交わした上で
「脚本をより良くするため」ならば
自分だけが持っている強いこだわりや思い入れは
引っ込めてしまった方が得策だったりします。
例えば――
脚本が長すぎてカットが必要になった場合
「一番気に入ってるシーンから削れ」――
なんて言葉があるくらいですから
強すぎるこだわりや思い入れをねじ込もうとすると
知らず知らずに脚本の出来をいびつにしてしまうものです。
ならば、まずは気に入ったシーンをカットしてみる
という先人の知恵なんでしょう。

ことほどさように
いくら自分は客観的に脚本をみているつもりでも
その客観性には限界があります。
独り善がりな表現に陥ってる可能性が高いってことです。
だからこそ
意見交換やダメ出しされることや議論することが必要であり
かたくなに自分を貫くのは得策ではありません。

しかし、それでも自分を貫いた方が正解なケースもあります。
それは、リライト地獄の無限ループ回避のためです。

wa_uroboros.png

oni_jigoku_kama.png

テレビ局や映画会社とのお仕事の場合でしたら
大抵は、タイムリミットで区切られているので
出口の見えぬまま、延々とリライトを繰り返すことはありません。

脚本の出来が良ければ早々に最終稿となって撮影に入りますし
出来が悪くてリライトを重ねても先方が気に入らないとなれば
「一旦、預かります」とか何とか言われて
他の脚本家に依頼されてしまったりする訳です。

が、そうではない場合が、あります。

脚本は映画やドラマの設計図ですので
施主の発注に基づいて作られます。
ざっくりしたイメージの発注からプロットや脚本といった
具体的な設計図を書き起こすのが脚本家の仕事。
で、打ち合わせによって、徐々にイメージ通りにリライトしていく作業を
施主と一緒にしていく訳ですが
まれに、同じところをグルグル回って前進したがらないタイプの人がいます。

リライトの無限ループをしていることが脚本作りをしていることだと
錯覚していて、イビツな充足感を味わっているタイプです。

そんな施主は
リライトしてきたものに対して脊髄反射でダメ出しを繰り返します。
脊髄反射なので、全体の流れは見てません。
個々のシーンの出来上がりのみにこだわります。
そして、なんとなくの違和感だけを理由にリライトさせます。
リライトされたものを読むと、また新しいアイデア(!)が湧いてくるので
そのアイデアを反映するよう指示されます。
結果、どんどん最初の発注から離れたものになっていきます。
で、「最初と全然違うじゃん!」と元に戻そうとジタバタしたり
ここまで違うなら、設定ごと変えちゃうか!とか言ったりします。
出口は見えません。
そういう人は、
「これじゃないんだよなぁ」とは言いますが
「じゃあ、どれなのか」というと、自分でも分かってないようです。

question_head_boy.png

このように
延々とリライトばかりを重ねるものの
いつまでもビジョンは定まらず、いたずらに時間だけを費やし
作家を消耗させ疲弊させ絞りカスのようにしておいて
ギャラを支払う素振りさえ見せないような
そんな人とお仕事してしまう場合があります。

どうにかして着地させようとする施主ならいいんですが
こういうリライト地獄を引き寄せる施主は
ダメ出しすることに快感を覚えてたり
リライトを提示するたびに別のアイデアが湧き上がることに
喜びを感じてるので、いつまで経っても
リライト→本打ちスパイラルから抜け出ようとしません。

こういう時が、
「自分の面白いと思う事を貫いた方が正解」のケースです。
頑として譲らず、戦ってください。
こっちの方が面白いんだ!と突破を試みてください。
そうしないと、その渦からは抜け出せないからです。

施主が納得すれば、よし。
納得しないのであれば、それもまたよし。
時間は無限ではありませんし
お互いの相性もあるでしょうから
そのお仕事からは撤退するのが得策です。

pose_hashiru_guruguru_man-1.png

ただし、本打ちとリライトを繰り返すのは通常営業ですので
5回や6回、いや、10回リライトしているからといって
これはリライト地獄や!と思わないでください。
それはただの「リライトの嵐」です。目的地に着いたら止みます。

同じところをグルグル回って前進しないのがリライト地獄です。
アリ地獄のように前進できずに中身を吸われて捨てられます。

rat_race_businessman.png

なので、「この人と本打ちしてても前進してる実感がない!」
と思ったら、思い切って我を通してみてください。
突破できたら、めっけもんですし
それでも同じことをダラダラ言い募るようなら撤退です。

その際、それまで書いてた分の脚本の処遇をどうするか
きちんと話し合って、できれば文書に残しておいた方がいいです。
でないと、後々トラブルになったりしますのでご注意を。

先ほども書きましたが、施主との相性もあります。
脚本家が変わったら意外とすんなり着地できた、なんてケースもあります。
有名なベテランの方から私にバトンタッチされたこともありますし
私が撤退したので、別の方にバトンタッチしたこともあります。
なので、どうしても無限ループを突破できないときは
面白い脚本作りに資すると思って
自ら撤退することも選択肢に入れた方がいいです。
なにしろ、面白い脚本作り、というのが正義なのですから。

私自身、ここ数年はそんなアリ地獄のような状況に陥ることもなく
デビュー作でお世話になった監督と再びお仕事をしたり
こつこつとプロットコンペの仕事をしたり
意気投合した方たちと仕事をしたりと
幸いにも消耗疲弊するようなことなく、地道に頑張っております。

その中でも、今夏、ご一緒していた皆さんとのお仕事は
私自身、初めての類のお仕事で、とても刺激的でした。
本打ちでの意見交換や議論も、とても有意義で楽しいものだったので
もう少し本打ちの回数重ねてもいいくらいに思ったものです。
そのお仕事に関して、このたび嬉しいお知らせを受け取ることができました。

それは……

「先進映像協会ルミエール・ジャパン・アワード」において
 VR部門の準グランプリを頂きました。

trophy_businessman.png

こちらに、ニュースリリースが出ております。
 
ルミエール・ジャパン・アワードというのは
VRや3D、4K8Kなどの先進映像技術コンテンツの普及発展を目指す
国際団体:先進映像協会の日本部会が開催しているコンクールです。

準グランプリを頂いた作品は、企業研修コンテンツで
上司世代とミレニアル世代にある隔絶感や
世代間のコミュニケーション齟齬を解消するための
ヴァーチャルリアリティー作品となっております。

作品の特性上、一般公開はしてませんが
もしかしたら、企業研修としてご覧になるかもしれません。
その際は、楽しみつつも自分とは異なる世代の立場になって
様々なことを学んで頂けたら幸いです。

地道に頑張ってたらいいことあるなぁ。

これからも頑張ります。

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本打ち と 正義 [シナリオ作法]

酷暑が過ぎ去り、少しずつ秋の気配が感じられるようになりましたね。
みなさま如何お過ごしでしょうか。

私はといいますと、右手の指を怪我してしまいまして
このひと月ほど、難儀しておりました。
ちょうど、仕事がひと段落した後だったので良かったです。
なんだかいつも、ひと仕事おえると、風邪だの怪我だのしてる気がします。
たぶん、緊張感がゆるむんでしょうね。

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さて、前回は「本打ち」に関して少し言及しましたが
今回も、もうちょっとお話ししたいと思います。

脚本は、書き上げたらプロデューサーに渡して
それでおしまい…ではなくて
そこからが始まりです。

ドラマや映画の設計図な訳ですから
不備があったら大変です。
プロデューサーや監督の納得のいくものになるまで
話し合いをして書き直しがされます。
この話し合いを「本打ち」といいます。

あれこれ工夫して書き上げた脚本に対して遠慮会釈なしに
プロデューサーや監督が寄ってたかってダメ出しを言い募ります。
様々な要求や提案や疑問が投げかけられ
それに対する回答を求められます。
そして、その回答にすらダメ出しがあったりします。

本打ちに関して新人の方に伝えたいのは
心折れないように気をつけてください。ということです。
きっと、シナリオスクールでのダメ出しよりも数倍キツいと思いますが
それを乗り越えると
ひとりで書いては直しての繰り返しをしていた時よりも、
講師やスクール仲間の批評にさらされるよりも、
格段に自分に力がついたという実感が得られます。

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たとえどんなに初稿の出来が良くても
スポンサーや役者の事情を考慮したり
ロケ地や撮影スケジュールを考慮したり
様々な事柄の兼ね合いを調整する、という理由で
本打ちをする必要がでてきたりします。

向田邦子さんは
出演俳優ふたりのスケジュールがどうしても合わないという理由で
ふたりが同じフレームに入らなくても撮影ができるように
怒ったキャラをなだめるというシーンを
お茶の間ではなくて、部屋の中と廊下に分けたそうです。
怒ったキャラが自室に閉じこもり、
それをなだめるキャラは廊下にいる。
ふたりは襖を間に挟み、会話をする。
そんな風に変更したとのこと。

これなら別々に撮影できますし
お茶の間でふたり向かい合って話し合うよりも
絵変わりもしますし、襖がふたりの心の壁を表しているようで
見ている人たちにも劇的な効果を与えることができます。

このように、本打ちで提示された条件をただクリアするのではなく
作品としてのクオリティも高めることができるようにするのが
腕の見せ所、だと思います。

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本打ち初回にプロデューサーや監督が険しい顔をしているのは
一瞬で肝が冷えるものですが、ニコニコしていても油断してはいけません。

映画「サイドウェイズ」の最初の本打ちの時、
亀山さんはニコニコして上機嫌でした。
そして開口一番「面白かった!」と言ってくれました。
あ、これは直しは少なくて済むかな、と思ったんですが
次の瞬間、嬉しそうな顔で「じゃあ、どこから直すかな〜♪」
と言ったので、ガクッとしました。
どうやら、出来が良かったら良かったで
リライト提案するのが楽しいとのことです。
なるほど、こうやって数々のヒット作を送り出したのねと納得。
貪欲に面白さを追求する姿勢が大切なんだな、と学びました。

別の作品で、他の脚本家の方と競合していた時のことです。
なんとか初稿コンペで勝ち上がり
競合相手の名前を聞いて驚いたことがあります。
そんな大物に競り勝った初稿ならリライトなんてそんなにないだろうな
と思ったのも束の間、怒涛のように本打ちを繰り返したこともあります。

出来が良くても、本打ちとリライトというのは必須なようです。
ならば、しっかりと本打ちに臨む気構えをしていた方がいいですよね。

本打ちに際して気をつけなければいけないのは
相手に遠慮して、あるいは議論するのが面倒で、
直しの提案を唯々諾々と受入れてしまうことです。

もちろん、直しの提案が納得いくものなら
素直に受け止めて直せばいいんですが
そうでないのなら、きちんと議論すべきです。

でないと、こんな風になるかもしれません――
ある提案通りに直したら、他のシーンとの兼ね合いで
なんだか周辺のシーンとのバランスがおかしくなった。
次の本打ちではそれらを調整するよう言われたので
周辺のシーンもリライトしつつ、整合性保つため当初のシーンもリライト。
次の本打ちでは、リライトシーンによって全体の印象が変わったので
そもそもの設定から再考してみようかと提案される。
困ったなぁと思いながら再考案を携えて次の本打ちに臨む。
するとその本打ちでは、またまた直しを言い渡されるんだけど
その直しの内容が、元々の脚本と同じ内容だった……orz
なんてことになったりします。

それで、あぁやっぱり最初のままで良かったんだねと言われればまだいいですが
「ほら俺の言った通りリライトしたら上手く着地できたよ」
なんて言われることすらあります。
元に戻しただけなのに、手柄横取りされた気分です。

これはまぁ極端な例ですが
思いつきのリライト提案を考えもせずに受け入れてしまうと
ひどく遠回りすることになってしまいます。
あるひとつのシーンを書くに至るまでの経緯を
本打ちを通してプロデューサーや監督がもう一度辿ってしまう訳ですからね。

なので、このシーン、このセリフ、この行動になったのは
こういう考えと効果を狙い、こんな経緯で決まったんですよ
と説明するのは大切です。

その上で変えた方がより面白くなるのなら
どう変えた方がいいか、きちんと話し合いをしましょう。

その脚本は、執筆時点で自分がベストだと思ったものです。
散々頭を悩ませながら、キャラクターに心を寄せて
作り上げてきたものです。
脚本に関して一番時間を費やし一番頭を使ってきたのは
脚本家であるあなた自身です。
どんなに有名監督でも、大物プロデューサーでも
臆することはありません。
自信をもって、作品を面白くするべく議論してください。

で、面白くなるなら、自分の思い入れとかプライドとか
そういうのはあっさり切り捨てて、リライトしてください。
面白くなることが正義です。

自分が面白いと思うものを貫くのも大事ですが
一番大事なのは、観客・視聴者が面白いものを提供することです。
目の前にいるプロデューサーや監督を納得させられない面白さなら
お茶の間や客席にいる人たちを満足させられることは難しいでしょう。

まぁ、中には自分を貫いた方が正解なケースもあるわけですが
それはまた次回。


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リライトと 本打ち [シナリオ作法]

さて、ゴールデンウィークもとっくに過ぎ、ツツジも見頃が過ぎましたね。
そろそろ紫陽花が咲き始めている感じです。
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五月中旬までは、雨が続いて寒かったり、急に日差しが強くなって夏日になったりと
気候の変化が激しい日々が続きましたが、みなさんお変わりないでしょうか。

前回はおしらせ記事でした。
「私は屈しない」配信延長が決まったお知らせが今年もできて良かったです。
これもご覧になってくださった皆さんのおかげです。ありがとうございます。
   「私は屈しない」のParavi配信はこちらから
   
「ハムラビ」アマゾンキンドルでの販売も少し軌道に乗った感じです。
お値打ち価格なので、是非どうぞ。
  「ハムラビ」アマゾンキンドル販売はこちらから

「サイドウェイズ」のiTunes配信も、ちょうど4月期のドラマに
小日向さんや生瀬さん、京香さんがそれぞれ出演していることもあって、順調です。
4月に上映開始されたパシフィックリムの続編には菊地凛子さんも出演してますので
サイドウェイズ出演者がみんな揃って活躍してる姿を見ることができました。
とても嬉しいです。
レンタル400円はちょっとお高いかもしれませんが
きっと満足のいく作品になってるはずですので、こちらも是非どうぞ。
  「サイドウェイズ」iTunes配信はこちらから

   Amazonビデオは、こちらをから

お知らせはこのくらいにしてですね
その前の記事でお話ししたリライトについて、もう少し続きを。

リライトとは、書き直しのことですが、2種類あります。
ひとつめは、自発的に行うリライト。
もうひとつは、誰かに指摘された部分を直すリライト。

シナリオコンクールなどに応募する場合は
自発的に行うリライトがメインになると思います。
(シナリオスクール生は、講師の方や同期生に講評もらってから直す場合があるのかもしれませんね。その場合でも最終的には自分がOK出すので自発的リライトに分類されるかなと思います)
これは、直した方がいいと自分が思ったところを書き直していく作業ですね。
前々回お話ししたリライトも、主に自発的に行うリライトにあたります。

一方、誰かに指摘された部分を直すリライトは、
いわゆる「本打ち」を受けての書き直し。
本打ちとは、映画やドラマのプロデューサーや監督たちと
脚本に関して打ち合わせをすることを言います。
脚「本」に関しての「打ち」合わせなので「本打ち」
と言うのかな…と勝手に思ってます。知らんけど。

執筆する前に打ち合わせを重ね、それをもとに脚本を書き上げて
メールに添付してプロデューサーや監督に送信するとですね
「じゃあ、次の水曜日に本打ちします」とかなんとか連絡が来るわけです。
で、えっちらおっちら打ち合わせ場所におもむきますと
プロデューサーや監督が、ダブルクリップで留めたA4の紙の束=シナリオ第一稿を持ってて、
そこには何やら書き込みとかあるのが見えたりすることがあります。

なんの書き込みかというと
このシーンでこのキャラがどうしてこんなセリフを言ったのか、などの質問系から
このシーンが長すぎるとか短すぎるとか、こういう行動をさせた方がいいなどの提案系、
はたまた、スポンサーが嫌がるからこんなセリフ言ってもらっちゃ困る、などのNG系。
など様々です。

そんなあれやこれやのダメ出しを受け、
一週間くらいでリライトして再び送信しなきゃいけないんですが
指摘された部分だけを直せば済むわけではない場合があって、悩ましいところです。
ホントに無駄なシーンなら単純に削って終わりですが
そうでない場合も多々あるわけです。

その場合、全体が長いからってんで、あるシーンを削ったとすると
それに伴って様々な修正の必要性が出てきます。

厄介なことに、ストーリーの進行上、削っても問題なさそうなシーンであっても
実はそういう細かなシーンがキャラクターの印象を左右するようなものだったりします。
その場合、機械的にカットしてしまうと
のちのちのキャラの行動が整合性取れないものになったりします。

そうすると、削ったシーンで与えるはずだった印象や感情を
他のシーンの行動やセリフに分散させなければならないんですね。

こういうリライトが一番難しいんですが、一番自分の力になるリライトでもあります。
自分では出来がいいと思ってた脚本であればあるほど
それは有機的に絡み合い、緻密にイメージや心情を積み重ねているので
ひとつのシーンであっても、削ったり直したりすると
全体に影響を及ぼし、それをトリミングする作業も複雑になってきます。

1シーンにひとつの役割しか持たせないよりも、いくつかの役割を持たせた方が
脚本がタイトな仕上がりになるので、面倒だと思ってもトライしてみるべきです。

ちょっと気が遠くなる時がありますけど、そんなリライトをきちんと着地させると
ドヤ顔で脚本を送信できますので、踏ん張りどころではあります。

まぁ、それでも、次の本打ちで別のダメ出しされてリライトするんですけどね。
pose_nidomi2.png

デビュー作を書いてる時、どれだけリライトをするのか見当もつかなかった私は
リライトするごとにファイル名を「Ver.2」から「Ver.2.5」と変えていき、
そこからちょっと変わったら「Ver.2.5.5」
などとマイナーチェンジのナンバリングをしていき
そこから更に大幅変更あったら「Ver.3」…という風にしてました。
macOS方式です。
プロットの枠組みさえ変わるようなリライトは、
せいぜいVer.5くらいで済むと思ってたからです。
「Ver.8」を超える頃になると、
あぁこれは、こんな区切り方してたらキリがないと気づいて、
日付でファイル名を区別するようにしました。

何度も何度もリライトを重ね、本打ちで議論を重ね
これで完璧だ!と思うシナリオを提出しても、まだダメ出しくらう。
メンタル面でのタフさも、脚本家に必要なんだなぁ、と実感したものです。

いま思えば、デビュー作で散々リライトしたのは
監督が鍛えてくれてたんだろうなぁ、と思います。
ありがたい。

一昨年にお仕事ご一緒したので、またそろそろ一緒に仕事したいなぁと思っております。

もし、今まさに本打ちとリライトを重ね過ぎて、もういやだー、と思ってる新人の方は
本打ちに呼んでくれてるうちが華、ここが正念場と思って頑張って頂きたいです。
ダメだなこいつ、と思われたら
スーッと潮が引くようにフェイドアウトされてしまいます。
私もフェイドアウトされたことありますし
逆にフェイドアウトされた人の代わりを務めたこともあります。

そして、まだデビューをされてない方は、まずは自発的なリライトを重ねて
作品のブラッシュアップを図ることに慣れておいてください。
自分の作品に自信を持つのは大事ですが、受け止める人がいてこその作品です。
過信は禁物。常に磨きをかけることを心がけましょう。
そして、第三者の意見を聞くというのは
自分の作品をより面白くするための貴重なチャンスですので
もし友人やシナリオスクールで耳の痛い指摘をされたとしても
真摯に受け止めてリライトしてみてください。

長々と書きましたが、あくまでも私が今まで経験した中での話なので
これが正解だというつもりはありません。
これから脚本家として歩き始める、あるいは目指している人が
リライトと本打ちの嵐に面くらわないように、心構えをしてもらいたいなと
そんな気持ちで書いてみました。

次回は、本打ちについて、もう少し書いてみようと思います。
なるべく何ヶ月も空かないようにしたいです。
では、また。

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プロット分析 と リライト [シナリオ作法]

前回のプロット分析からの、つづきです。

即興でお話を作って息子に聞かせるという「おてて絵本」の時に
プロット分析が役立った……ということだったんですが
このプロット分析は何かといいますと

さまざまな物語は、プロットであらわすことができ、
それを分析することによって、物語の構成がしっかりしてくる
ということになります。

桃太郎の物語を例にしますと
momotarou.png
おじいさんとおばあさんの紹介。……セットアップ
桃を拾い、桃太郎の誕生。……カタリスト
桃太郎、鬼退治に行くと宣言。……ターニングポイント1
鬼ヶ島への道中。動物たちの質問による足止め。……バリア
きびだんごをあげることにより動物たち仲間になる。……ツイスト
鬼ヶ島に到着。……ターニングポイント2
鬼たちとの戦い。そして勝利。……ペイオフ
財宝を持って、村に帰って来る。……エンド

という感じでプロットに起こせます。

簡単に解説しますと
セットアップで、まず状況設定します。
次にカタリスト。きっかけになる事件が起きます。
ターニングポイント1で、メインの事件に立ち向かうこととなります。
次のバリアでは、目標になかなかたどり着けない葛藤が描かれ
ツイストにより、障害を回避して更に目標に向かいます。
ターニングポイント2では、最後の試練が目の前に現れ、
ペイオフで、清算されます。
エンドは物語の余韻、結末。と、なります。

この八つの要素にプロット分析できたら、次はリライトです。
普通の桃太郎のお話ではなく「おてて絵本」の桃太郎ですから
アレンジしなくては、面白くありませんし、息子も飽きちゃいます。
なので、おてて絵本をする時は
プロット分析しつつ、それぞれの要素を強化してお話しするわけです。

セットアップとカタリストは
桃太郎というお話だということを息子に知らしめるために、
オリジナルのままでいきます。
ただし、桃太郎が強い男の子に成長したことを
きちんと付け足しておきます。

次にターニングポイント1ですが
Bad News → Good Newsにすると劇的になるので
桃太郎が出かけてる間に、村が鬼たちに襲われるシーンを入れます。
聞いてる息子は、鬼たちに憤ったり、
村が大変な目にあって、一緒に悲しみます。Bad Newsですね。
そこですかさず、Good Newsとして、
桃太郎が鬼退治に行くと宣言し、立ち上がります。

一路、鬼ヶ島を目指すこととなる桃太郎ですが
行く手を阻むのは犬・猿・キジです。
RPG的には仲間を増やすためのイベントですが
プロット分析的には目的地へ向かう足を止めるわけですからバリアです。

どこに行くの?腰にぶら下げてるのは何?きびだんご?ひとつくれないかな?
これら足止め質問に普通に答えて関門を通り抜け一人で進む…、のではなく
動物たちに吉備団子をあげる代わりに、鬼退治の仲間にする
というヒネリを加えて突破するので、ツイスト、というわけです。
yoga_hineri.png
ここの繰り返しは大人にとっては、かったるかったりしますが
子供にとっては繰り返しの面白さがあるようです。
なので、動物たちをひとまとめに登場させることなく
一匹ずつ出します。ただし、それぞれ足止めする方法を変えます。
村を出るための橋の上で犬がトオセンボしてたり
浜辺の舟に乗ろうとしたら猿が出てきて邪魔したり、とかです。

桃太郎の場合はバリアとツイストが3回ありますが
バリアとツイストの長さや回数を増減することによって
物語の長さは、如何様にも変えることができます。

プロット構成としては、バリア・ブロック→ツイスト・ブロック
になるのが理想的なんですけど、
桃太郎の場合、バリア→ツイスト、が3回繰り返されるんですよね。
もちろん、それが昔話の桃太郎としてのいいところなんですけど
シナリオのリライトとしては、
動物たちが現れて足止めしてるのを
ひとつひとつのバリア→ツイストではなくて、
ひとまとめのバリア・ブロックとして処理した方がいいと思います。
lego_block.png
例えば……犬が来て質問。吉備団子をあげて仲間になる。
しかし、そこへ猿が現れ吉備団子を奪って逃げる。
追いかける桃太郎と犬だが、見失ってしまう。
そこへキジが現れ、猿を捕まえてきてくれる。
ところが、犬と猿とキジで吉備団子の取り合いで喧嘩になる。
ここまでが、目標に向かって進んでないのでバリア・ブロック。

喧嘩を仲裁する桃太郎。動物たち全員に吉備団子をあげる。
その代わりに、鬼退治の仲間になってくれと提案。
喧嘩をやめて、仲間になる動物たち。
鬼ヶ島へ向かうために浜辺へ行く桃太郎一行。
すると、漁船を壊して回る数人の鬼を発見。
桃太郎たちは力を合わせて、鬼をやっつけ
鬼ヶ島へ行く海図を鬼から手にいれる。
と、ここまでがツイスト・ブロック。

こうして上手くいってる勢いのままに
すんなり目的達成してしまうのは、ちょっと盛り上がりに欠けるかなぁ
と、思っちゃいます。
もうひと山、欲しいですよね。

なので、ターニングポイント2では
Good News → Bad news という順番の出来事を配置します。
バリアで足止め、ツイストして前進して、最終目的地が見えてきた。
そこで、もうひとひねり。というわけです。
yoga_hineri_man.png
さて、おてて絵本の桃太郎に戻りますと
息子はバトルシーンが大好きなので
ターニングポイント2は、鬼ヶ島に到着して
鬼と戦うところまで含めます。
オリジナルだとペイオフだけだったバトルですが
ここがあっさりし過ぎてるので、膨らませるわけです。

kodomonohi_yoroi_kabuto.png

無事、鬼ヶ島に到着し、鬼たちと戦い、
仲間の活躍もあり鬼たちを圧倒する桃太郎たち。これがGood News
鬼たちを退治したと思ったところ、地鳴りと共に城の奥から
巨大な鬼の大将が現れます。
鬼の大将は犬・猿・キジを蹴散らし、桃太郎をも吹っ飛ばします。
そしてとうとう桃太郎が倒れてしまう……。これが Bad News

続いて、ペイオフ:清算です。
倒れた桃太郎を励ます犬・猿・キジ。
おじいさんおばあさんからもらった吉備団子を
桃太郎に食べさせます。
(象徴的なアイテムが最後の最後でまた活かされるわけですね)
すると、見事に立ち上がり、パワーアップした桃太郎は
鬼の大将を圧倒的な力でやっつけます。

アンパンマン方式ですね。あるいはポパイ方式。
一度、倒れた主人公が復活する。
マトリックスもそうでした。
ジョゼフ・キャンベル「神話の力」でも言及されておりますね。
英雄は一度倒れてから、復活して、より強くなる。

さて、エンドです。
桃太郎は、鬼たちに今後二度と村を襲わない約束をさせ、
奪った財宝を返すということで鬼たちを赦します。
村に帰った桃太郎は、財宝を村の人たちに返して
おじいさん、おばあさんと幸せに暮らしましたとさ。

で、おしまい。
はい、もう寝る時間だよー。
と、こんな感じの桃太郎リライトを、おてて絵本として
その場その場でアレンジしながらお話ししてたわけです。
シナリオのリライト技術が子育てに役立って良かったです。

但し、最後のバトルの場面でエキサイトしてしまい
もうひとつ、ほんわかのんびりしたお話をしなくてはならないことが
多かった気がします……。

なので、息子が桃太郎の話をせがんできた時以外は、
オリジナルの「おてて絵本」話を即興で作ってました。
息子と一緒になってお話を作ったりして、楽しかった思い出です。

reading_boy.png

プロット分析の方法は人それぞれですので
上記の桃太郎の分析は間違ってる!という人もいるでしょうし
その後のリライトの方法も手ぬるい!という人もいるでしょう。
それはおのおの自分が正解だと思う方法で試してみてください。

こうしたプロット分析からのリライトの流れというのは
シナリオの完成度を高めようと思った時に、役立つかもしれません。
参考にできるところは、参考にして頂きたいと思います。

大バコ、小バコを作ってからシナリオを書く、という人でも
案外、こうしたプロット構成は考えずに書くことがあると思います。
書き上げてはみたけど、どうもしっくりこないな、という時は
自分の作品のプロット分析をしてみて、
それから各要素の強化をすると、うまくリライトできたりします。

ちなみにリライトの前段階のプロット分析の時に
どう仕分ければいいのか、わからない時があると思います。
そういう時は、要素ごとの働きが上手く機能してない可能性があります。
なので、そこを明確にすれば、より良いシナリオになることが多いです。

もちろん、シナリオの書き方なんて、ひとりひとり違っていいものです。
なので、これが正解というわけではなく
私が勉強したり経験した中で、
うまくいったことをお伝えしてるだけに過ぎません。
何かうまくいかないんだよなぁ、という人の一助になったら幸いです。

長々と講釈たれましたが、じゃあ、お前の書いたのはどれほどのもんなんだ
と思う方はTBSオンデマンド Paraviで「私は屈しない」を配信しております。
どうぞご覧になってください。

**(TBSオンデマンドのサイトは終了されて、Paraviに引き継がれてます)**
**(おかげさまで長らく配信期間が延長されてきました)**
**(ご覧になってくださった方々のおかげです。ありがとうございます)**

では、また。
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自己アピール と プロット分析 [シナリオ作法]

前回は自己アピールについて書かせて頂きましたが
みなさんは、自己アピール、してますでしょうか。

仕事についての自己アピールはもちろん必要ですが
私は普段の生活の中でも、積極的に行うようにしています。

洗濯やお風呂掃除、夕飯の買い物などの家事をした時には
妻に報告する形をとりつつ自己アピール。

oosouji_dougu.png

気をつけなくてはいけないのが、「〜してあげた」と言わないこと。
「洗濯しといてあげたよ。一杯あって大変だったぁ」じゃなくて
「洗濯したよ。ハンガー使い切って、今ないから」
……ハンガー全部使い切るほどたくさん洗濯したってことを
あくまでも、報告の形で。

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自分がそう言われるのが嫌なので言ったことはありませんが、
「風呂掃除してあげたよ」なんて言われたら
アンタの家でもあるんだから、なんでそんな恩着せがましく言うんじゃい!
と思うでしょうね。

妻も働いてますので、家事はできる方がしておく方式をとっています。
なので、お互い「やってあげた」なんてことは言わないのが当然でしょうが、
たとえば洗濯ですと、干す場所やハンガーの数の関係があるので
ベランダに干してあるのを知らずに洗濯機を回してしまうと
ビショビショのまま干すことができなくなっちゃいますし、
夕飯の買い物に何を買ったか大まかに報告しとかないと
同じもの買っちゃってもったいないことになる…とか
そういう意味もあって、
報告がてら、家事やりましたアピールをすることにしてます。

で、アピールして「ありがとう」と言われたいのかというと
実はそうじゃありません。
私は「ありがとう」と言われるのが好きじゃないんです。
何かをした時に「ありがとう」と言われたくない。
いや、誰かに言うのは嫌じゃないし、むしろ沢山言うんですが、
自分が言われるのはそんなに好きじゃありません。

ありがとうと言うしかない場面でしたらいいんですけど
なんでもかんでも、ありがとうを連発する人いますよね。
あれ、ちょっと苦手です。
なんか「気づき」とか言う人に多いイメージです。

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これを言うと偏屈に思われるかもしれませんが
何かをした時に相槌のように「ありがとう」と言われると
それでもう終了、ハイこれで対価は払いました。
そんな風に思えてしまうんです。

なので、「お風呂掃除したよー」の返しとしては、
「わかったー」と言ってくれるだけで良かったりします。
嬉しそうな顔をしてくれれば、なお良し、です。
感謝されるよりも、喜んだり嬉しそうな顔を見る方が好き。
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私が自己アピールするせいでしょうか
息子や娘も、ちょいちょい報告にきては
褒められるまでアピールを続けたりします。

4歳の娘は、縄跳びをもってきてはピョンピョン飛び続けますし
8歳の息子は、本で得た歴史の知識を延々と披露してくれます。

小さい頃から絵本を大量に読み聞かせしてきたおかげなのか
息子は本が好きで、よく本を読んでいます。

そういえば、昔、寝る前に「おてて絵本」というのをやってました。
これはEテレのある番組でやってたんですけど、
両方の手のひらをつなげて開き絵本に見立て、即興でお話を語るというものです。

いろんなお話をしましたが、定番ものとして桃太郎のお話をしたことがあります。
ただし、そのままやっても、おてて絵本の意味がないのでアレンジを加えます。
結構、好評で、その後何度もリクエストをされました。

で、その時に役立ったのがプロット分析です。
プロットにはある一定の形がありまして
それに沿ってお話を作ると、なんとなく上手く作れます。

そんなものに縛られずに自由に書けばいいんだよ!
という向きもありましょうが
自由に書いて面白いものができるのは一部の天才の方のみ。
そんな天才の書いたシナリオでも、プロット分析してみると
実は構成はきっちり基本に忠実にできてたりします。

昔ながらの「起承転結」はご存知の方も多いでしょう。
ハリウッドでは「3 ACT 構成」というのもあります。
脚本を勉強してる人には、シド・フィールドなどでおなじみだと思います。

で、私がいろいろ勉強したり、実践で学んだことを総合しますと

セットアップ
カタリスト
ターニングポイント1
バリア
ツイスト
ターニングポイント2
ペイオフ
エンド

この8つがあれば、お話はできるんじゃなかろうかと思います。
桃太郎で言いますと、

おじいさんとおばあさんの紹介。
桃を拾い、桃太郎誕生。
桃太郎、鬼退治に行くと宣言。
鬼ヶ島への道中。動物たちの質問による足止め。
きびだんごをあげることにより動物たち仲間入り。
鬼ヶ島に到着。
鬼たちとの戦い。そして勝利。
財宝を持って、村に帰って来る。

と、こんな感じです。
カタリストやターニングポイントなどの用語は
「ハリウッド・リライティング・バイブル」に詳しいです。


で、この通常の桃太郎のお話を
プロット分析したのちにリライトすると……

ちょっと、長くなりましたので、それはまた次回書かせて頂きます。


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あらすじと最短距離 [シナリオ作法]

前回「あらすじから脚本を書くのは大変」って書きましたが
じゃあ、あらすじ書く時はどうしたらいいのよって事ですが
「あらすじは脚本を書き終えてから書く」が基本です。

シナリオコンクールに出した人は覚えがあると思いますが
脚本を書き終えてから、あらすじを書きますよね。
あれ、しめきりが近づいてる時だと、焦ります。
800字分とかで物語を説明しなきゃいけないので
まとめるのに結構、時間かかっちゃうんですよね。

かといって前もって書いておけばいいって訳でもないんです。
あらすじって物語の要約なので、書き終えてからでないと
書きようがないんですな。
study_yaruki_nai.png

例え、あらすじを先に書いてたとしても
おそらく脚本を書き進めるうちに
あらすじから逸れていってしまうと思います。
逸れたからといって無理に合わせようとすると
つまんないものになるんですよね。

まぁ、そうは言っても
「あらすじなんて、物語の要約でしょ。
さくさく、まとめればいいじゃん」
なんつって味も素っ気もないようなあらすじを書いちゃう人もいます。

でも、ちょっと待ってください。

シナリオコンクールに添付するあらすじは非常に大事だと思います。
応募数が多いコンクールの場合は
あらすじだけ読んでつまらなかったら脚本自体を読んでもくれない
なんて話も聞きますからね。

それに、あらすじを面白く書く技術があるかどうか
ってのも見てるんじゃないでしょうか。

もしコンクールで入賞できなくても
ある程度の脚本が書けてて、あらすじも面白く書く技術があるとわかったなら
ちょっとこの人に企画書依頼してみようかな、
とか、プロットライターを頼もうかな
なんて思われるチャンスが多くなるって事です。

それに、あらすじを書く技術は企画書を作る時などには
とても重要になると思いますので
せっかくの機会ですから、シナリオコンクールに応募する際は
実践練習と思って、面白いあらすじを書くようにしてみたら如何でしょう。

シナリオスクールに通ってる方々はそんなのとっくにご存知で
当然、あらすじ作りをおろそかにしてる人はいないと思いますので
今回の記事は、私のような自主練スタイルで頑張ってる人向けでした。

私は昔から人から教わったりするのが苦手なたちで
自分で調べたりなんだりしてどうにかするのが好きでした。
色々と遠回りしてしまう事が多くなるんですけど
それはそれで良いと思ってます。

最短距離がベストな道のりとは限らない。

そういう事です。

プーティーウィ


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プロットとあらすじ [シナリオ作法]

さて、前回はプロットについてお話しましたが
よく聞かれるのが「あらすじ」とどう違うの?という質問です。

私も聞かれるたびに、どう説明していいものか分からずに
ネットであれこれ調べてみては、うーん…と唸ってしまいます。
なんだか人それぞれのプロット観のようなものがあって、
これがプロットで、これがあらすじなんですよ皆さん!
って断言できないような状況のようです。

シナリオスクールでは、これがプロットの書き方!
とか教えてくれてるんでしょうが、如何せん、私は野良なので
そういった共通認識の伝授をされておりません。
シナリオスクール出身の誰かに聞いてみて
上手く聞き出せたら、発表する事に致します。

それはそれとして
私の思うプロットとあらすじの違いは
「あらすじから脚本を書くのは大変なので
 脚本を書く時はプロットからにしろ」
ってことです。

例えば、
地球で迷子になった宇宙人が
出逢った少年によって匿われつつ心を通わせる。
少年は宇宙人との交流によって
抱えていた孤独感や家族との疎外感を克服し、
宇宙人との絆を深めて行くが、
やがて宇宙人はUFOを呼んで宇宙に帰って行く。
…というあらすじから脚本を起こすのは大変です。
漠然としすぎて、どこから手をつけていいのやら、ですよね。




なので、今度はプロットでやってみましょう。
例えば、
宇宙人がUFOから置き去りにされる。
母子家庭で兄妹とは仲が良くない少年が登場。
少年と宇宙人が出逢う。
宇宙人、地球の文化についてテレビで学ぶ。
宇宙人、カタコトながら喋れるようになる。
少年と宇宙人と心がシンクロする。
シンクロしたが故の騒動が少年の学校で起こる。
少年の兄妹にも宇宙人の存在がバレる。
宇宙人を守るという目的で兄弟が団結する。
UFOを呼ぶためにアンテナ設置が必要。
ハロウィンに乗じて宇宙人が外出してアンテナ設置。
政府に宇宙人がいることがバレる。
宇宙人、具合が悪くなる。
シンクロした少年も一緒に具合が悪くなる。
政府に捕らえられる宇宙人。
宇宙人は少年を救うためシンクロを切り離し、死んでしまう。
宇宙人、復活。
UFOが迎えに来たと告げる宇宙人。
少年の仲間たちが協力してくれて、一緒に政府の手から逃れる。
少年たちと政府の役人とのチェイス。
UFOの着陸地点であるアンテナ設置場所に到着。
宇宙人は無事UFOに乗って帰って行く。
…と、こんな感じに要素が揃ってれば
さっきのあらすじよりかは、脚本にしやすいですよね。

他の人はさておきまして
私にとってのプロットは、こんな感じです。

まずはこんな風にざっくりしたプロットを書いたら
次は必要に応じて、主人公の心情の流れのポイントとなるエピソードを
配置したり、言わせたい台詞だとか、状況設定だとかを補足していきます。

kaisya_man.png

で、プロデューサーに見せる場合は
読んで面白く感じさせるように、文章を整えなくてはいけません。
かといって長くなり過ぎては、読んでくれません。
名刺代わりのプロットをビシッと渡すために日々努力であります。

もちろんプロット書くだけではお仕事にならないので
脚本も書かねばなりません。
当面、提出しなくてはいけないものがないからといって
脚本を書かないでいると、執筆脳が鈍ってしまいます。
なので、誰に頼まれるでもなく、脚本を書いていたりするんですが
幕末を舞台にしたペリーと幕府の交渉裏話的な映画に興味がある方がいましたら
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そんなこんなで、まもなく3月もおわりです。
4月から新しい環境に臨む方も多いと思いますが
どうぞ無理せず、健康第一で、お過ごし下さい。

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